こんにちは。

水口結貴です。今回は、中世の画家「ヒエロニムス・ボッシュ(ボス)」の「茨冠をかぶせられるキリスト」です。

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※画像は「ロンドンナショナルギャラリー」より

●「ゴルゴタの丘」へ行く前に「なぶりもの」になる

イエス・キリストが「いよいよ最後の時」を迎え、「ゴルゴダの丘」へと連行される場面を描いています。

聖書(マルコ伝)では、キリストが兵士たちになぶりものにされた様子をこう書いています。
「彼らはイエスに紫の衣を着せ、茨の冠をかぶせて王に仕立てたのち、ユダヤ人の王、万歳!と叫んで喝采した。それから葦の棒で頭を叩き、唾をかけ、ひざまずいておがんだ。こうしてなぶった後、紫の衣を脱がせてもとの着物を着せた」

●茨冠をかぶせられる瞬間

この絵は、まさに名もない一兵卒の手によって「キリストに茨冠がかぶせられようとしている」瞬間を描きました。
キリストの「受難」と言えば「十字架を背負う」、「十字架に磔になる」場面が有名ですが、この「茨冠をかぶせられる」瞬間もまた「キリストの受難」象徴する場面、と言われています。

●キリストの表情

茨冠をかぶせられる(≒この上ない苦痛を味わうはずの)キリストの表情は非常に穏やかです。
まるで、「画面のこちら側」=私たち(観客たち)を見ているようにも思えます。
キリストに冠をかぶせる兵士の表情がこわばって(緊張して)みえます。
一方、キリストの右に描かれている兵士は、憐れみか、侮蔑か、軽蔑か。複雑な表情をしています。


●キリストの「清々しさ」

私は、この絵を初めて見たとき「周囲の侮蔑」や「蔑み」、「悪意」に負けない「意思の強さ」-を感じたのでした。
この絵に描かれたキリストは「高潔」という言葉と共に、私の記憶に残ったのでした。