こんにちは。
今回は、アルフォンス・ミュシャの「メディア」です。
「アール・ヌーヴォーと言えばこの人」と思う方も多いのではないでしょうか。
ミュシャは「星、宝石、花」などを主なモチーフにして、流麗な曲線で女性を描きました。
その独特な流線と華やかな色使いで、徹底的に美を追求したデザインが特徴、と言われています。
●当時の人気女優のポスター
この作品は「聖なるサラ」と呼ばれて19世紀で最も人気があった女優サラ・ベルナールの舞台ポスターです。
ミュシャはこのほかにもサラの舞台ポスターを手掛け、一躍時代の寵児となりました。
(Poster for Médée) 1898年 所蔵先複数 ※画像は「本日記」より転載
●メディアはギリシャ悲劇の主人公
「メディア」は、「古代ギリシャ三大悲劇詩人のひとり」と言われたエウリピデスが書いたギリシア悲劇を基に作られました。
戯曲の作者は、詩人カチュール・マンデスです。彼はサラのの崇拝者であり、彼女のために新しい解釈で脚本を書いたのです。
ギリシャ悲劇について、簡単に言うと、こんな内容になります。
メディアは 英雄イアソンを助けて妻になりました。しかし、イアソンは別の女性と再婚しようします。それを知ったメディアは激しく怒り、夫の間にできた2人の子どもを殺します。
ポスターには、子どもを捜すイアソンに「もう、おまえの子供たちを捜すな。子供たちはここにいる」と叫ぶ場面が描かれています。
●日本画の影響が見てとれる
ギリシア悲劇を基にした舞台作品なので、ポスターのタイトルも「ギリシア文字風」になっています。
ポスターでは「蛇のブレスレット」が特徴的です。これは戯曲の主人公・メディアの激しく崇高な性格を表現したもの、という説があるようです。
メディアの背景に描かれているものは、まるで日本画(仏画など)に描かれる「光背(こうはい)」を連想させます。
また、黒(炭色)を基調にしていたり、背景の単純化された山や木の描き方、太い輪郭線も日本画の影響が見てとれます。
金で描かれた雲は、まるで屏風絵のようです。
さらに「落款(らっかん)」という、日本画や書に作者が押す印のような模様も描かれています。
ミュシャが日本美術を好み、親しんでいたことがうかがえます。
私は最初にこの絵を見たとき、怒りなのか、哀しみなのか、それとも憎しみなのか。
何を想っているのか?と「大きく見開いた目」に、心が射抜かれたのでした。
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