今日は、ゴッホの「星月夜」です。
有名な作品なので、ご存じの方も多いのではないでしょうか。
1889年(ニューヨーク近代美術館)※画像はwikipediaより転載
この絵を初めて見たときの衝撃は今でも覚えています。
「いったい、この絵はなんだ?」と目が釘付けになってしまいました。
星や月そのものが渦を巻き、中央には川の流れ、もしくは強い風のうねりのようなものが描かれています。
いつもは星や月が点在しているだけの「動かない世界」が一瞬にして、台風に呑みこまれてしまったかのようです。
この絵は、ゴッホが神経発作のためにフランスの「サン・レミ」という所にあるカトリック精神病院に入院していた際に描かれました。
その前年(1888)、自ら自分の耳を切り落とす、という事件を起こしています。
ゴッホは、決して長くはなかった人生の大半を精神的に変調を起こす発作に悩まされていたようで、統合失調症を患っていた、てんかんだった、という説もあるようです。
また、ゴッホは「自然世界との一体化」を盲信していました。それについて、こんな発言をしています。
「夜空の星をみているといつも夢見心地になるが、それは地図の上で町や村を表す黒い点を見てあれこれと夢想することに近い。何故、夜空に輝く点にはフランス地図の上の点のように近づくことができないのか不思議に思う ~中略~ 僕らは死によって星へと到達するのだ」。
本作に描かれた風景(「糸杉」と呼ばれる天高く伸びる杉の木など)は、入院していた精神病院の病室から見た風景が元になっています。
ただし、画面中央にある村と教会はゴッホが想像した風景が描かれた、ということです。
ゴッホは、「炎の人」と称されることがあります。
ゴッホ自身が持っている、「爆発的なエネルギー・激情が、空の月や星までも動かした」ようにも感じられてしまいます。
諸説あるようですが、「生涯で売れた絵は1枚だけ」とも言われ、経済的にも厳しい中で一生を過ごしたゴッホ。
そのゴッホが、こんな言葉を残しています。
「何も後悔することがなければ、人生はとても空虚なものになるだろう」
このエピソードを知ってから、私はゴッホの絵の見方が変わった気がします。
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