今日は、「印象派」と非常に関わりが深かったエドガー・ドガ(1834−1917)の「踊りの花形」を紹介しましょう。
この作品は「エトワール」、または「舞台の踊り子」とも呼ばれています。
1878年頃
(L'étoile de la danse (L'étoile ou danseuse sur scène) オルセー美術館
※画像は「Clarapress」より転載
●日本の浮世絵から、構図のヒントを得た
ドガの代名詞とも言える「踊り子」。踊り子をモチーフにした作品の中でも、最も有名なものの1つではないでしょうか。
本作では「舞台の観客が踊り子を上から見下ろす」という、とても大胆な構図が使われています。
これは、当時ドガが好んでいた「日本の浮世絵」の構図(構成)の巧みさ、奇抜さに影響を受けたから、という説があります。
●現代の舞台にも匹敵する「光」の存在
また、本作を印象的にしているのは、描かれている「光」ではないでしょうか。
現代の舞台美術でも通用するような、強い光(スポットライト)が、主役の踊り子を下から照らしていて、存在を際立たせています。
また、踊り子の表情や衣装を、その細部に至るまで繊細に表現しています。
さらに「写真撮影をしたのではないか?」と思えるほど、巧みに「舞台が盛り上がる1瞬」を切り取って、描いています。
●踊り子の「裏の世界」も表現している
一見すると、華やかな踊り子と舞台を描いている本作ですが、「左端」に描かれている人物に注目してください。
舞台のそでに立つ夜会服の男性と、出番待ちの脇役の踊り子たち。
当時、踊り子という職業はとても身分の低いもの、とされていました。
娼婦と同じようなものと認識されていて、売春や売春まがいが公然と行われていたようです。
中央で踊る踊り子も例外ではなかったでしょう。
そして夜会服の男は「踊り子たちのパトロン」という説があるようです。
華やかな舞台とは全く違う厳しい現実世界も、ドガは同時に描いていたのでした。
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